
【開発実績】発達障害の感覚過敏をサポートするiPad向け音刺激アプリ
科研費採択研究の成果物
発達障害のあるお子さんや大人が、パニックや興奮状態にある際に、音刺激を用いて心の安定を取り戻すことを目的としたiPad向け支援アプリケーション。感覚過敏、特に聴覚過敏に対して、一人ひとりの特性に合わせたサウンド環境を提供し、科学的知見に基づき当事者のQOL向上を目指します。
開発の背景と課題
本アプリは、2017年に弊社技術顧問の利穂虹希がNPO法人EdTech Tokushima youthの代表として活動していた際、2名のチームを率いるリーダーとして開発を推進したプロジェクトです。
発達障害のある方々、特に子どもたちがパニックや興奮状態に陥った際、周囲の音環境が大きなストレス要因となるケースが多く報告されています。しかし、従来の支援ツールでは個人の感覚特性に合わせた柔軟な調整が難しいという課題がありました。そこで、当事者が自ら、あるいは支援者が、その時の状態に最適な音環境を構築し、落ち着きを促せるツールの開発が急務とされていました。
アプリ画面紹介


本アプリの特長・機能
本アプリは、科学研究費助成事業(課題番号:26590266)の支援を受けて行われた研究プロジェクトの成果を実装した、科学的根拠に基づく支援ツールです。
一人ひとりの特性に合わせたサウンド環境の構築
- 複数の音源(自然音、ホワイトノイズなど)を同時に再生可能
- 各音源の「音量」「音程(ピッチ)」「再生位置(左右の定位)」を個別に、かつ直感的に調整
- ユーザーが最も心地よいと感じる音のシェルターを構築
視覚と聴覚でリズムを捉え、安定を促すメトロノーム機能
- 一定のリズムを刻むメトロノーム機能を搭載
- 音が鳴るタイミングに合わせてアニメーションが動くため、聴覚だけでなく視覚からも安定したリズムを感じ取ることができ、気持ちを落ち着けるサポート
客観的データ連携による高度なパーソナライズ
- 市販の脳波センシングヘッドバンドや心拍計測ウェアラブルデバイスとの連携機能を搭載
- 利用者の生体データ(脳波、心拍数など)をリアルタイムでモニタリングし、精神的な状態に合わせて音環境を自動調整する、より高度なパーソナライズ支援の可能性を追求
研究成果と科学的知見
本アプリ開発と並行して行われた研究により、以下の知見が得られました。
ノイズキャンセリングヘッドフォンの効果検証
特定のヘッドフォンとアプリを併用することで、外部からの不快な音刺激を効果的に遮断し、アプリが提供する音の効果を高められることを確認
自然音による鎮静効果の検証
川のせせらぎや鳥の声などの自然音が、利用者の心拍数を安定させ、リラックス状態を促進する効果があることを実証
個人差に応じたカスタマイズの重要性
音の好みや心地よさには大きな個人差があり、利用者自身が細かく設定を調整できるカスタマイズ機能が、支援効果を高める上で極めて重要であることを明確化
開発体制と使用技術
役割: プロジェクトリーダー
チーム体制: 3名(リーダー1名、メンバー2名)
使用技術: Swift, iOS
プラットフォーム: iPad
この開発経験を通じて、福祉・教育分野におけるテクノロジー活用の知見、外部デバイス連携を含む高度なアプリケーション開発、そして何より当事者のニーズに基づいたプロダクトを形にする実装力を培いました。